核内に存在するNF-κBは全身に広範に存在する転写因子であり、中枢神経細胞のアポトーシスを、強力に阻害する活性を有していることが明らかとなってきている。我々はこれまで、神経細胞と同様に様々な侵害によりNF-κBの活性化が報告されているオリゴデンドロサイトにおいて、NF-κB、特にp50サブユニットがアポトーシスを強力に制御することを見出しており、その作用機序の解明を行うことは神経系細胞の機能再生および脱髄疾患の治療という点で非常に重要であると考えられたので解析を行っている。 まずラットオリゴデンドロサイト株化細胞のTNF-α誘導アポトーシスが、他の細胞で代表的なアポトーシス実行機構とみなされているカスパーゼもしくはJNK経路を介する可能性を解析した。分化したオリゴデンドロサイト細胞株をカスパーゼ阻害剤もしくはJNK阻害剤により前処置してからTNFを添加し、16または24時間後に生存細胞数をMTT法もしくはヘキスト染色法、タネル染色法により解析した。結果、JNK阻害剤は部分的にアポトーシスを阻害したが、カスパーゼ阻害剤では阻害することはできなかった。そこで次にp50がこのJNK機構を介してアポトーシスを阻害している可能性を検討するため、p50の発現プラスミドを導入した安定発現細胞株におけるJNK活性化を検討した。コントロール細胞もしくはp50安定発現細胞株より細胞抽出液を調製しリン酸化JNKに対する抗体を用いてウェスタンブロット解析を行った。結果、p50発現細胞株においてはコントロール細胞と比較してJNK活性化が抑制されていることが確認された。以上の結果から、神経系細胞であるオリゴデンドロサイトにおいて、p50サブユニットはJNKの活性化を阻害することでアポトーシス阻害活性を示している可能性が示唆され、現在その詳細な制御機構をさらに解析している。
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