Nuclear factor kappa beta(NF-kappaB)は中枢神経系細胞に広く存在する転写因子の一つであり、中枢神経細胞の強力なアポトーシス阻害因子として機能することが報告されている。オリゴデンドロサイト(OLG)においては、NF-kappaBが様々な侵害刺激により活性化されるという知見から、アポトーシスとの関連性が示唆されていたが詳細は不明であった。OLGのアポトーシス阻害機構の解明は、脱髄疾患の治療および機能再生という点で重要であると考え、培養OLG株化細胞(CG-4細胞)を用いて分子生物学的・生化学的にアポトーシスとの関連性を解析した。 NF-kappaBのp50またはp65サブユニット発現プラスミドをCG-4細胞に導入し安定発現株を樹立した。NF-kappaB強制発現CG-4細胞は、腫瘍壊死因子(TNF-alpha)によるアポトーシス誘導に対する著明な抵抗性を獲得し、その抵抗性はNF-kappaBの阻害蛋白であるI-kappaBを同時に発現させることにより消失した。2つの代表的なNF-kappaBサブユニット間においては、p50の方により強力な抵抗性が確認された。また、TNF-alphaによるアポトーシス誘導は、カスパーゼやMEK阻害剤ではなくc-Jun amino-terminal kinases(JNK)阻害剤添加でのみ著明な抵抗性を示したことから、JNK依存性経路との関連性について解析した。結果、p50サブユニット発現細胞において、Gadd45beta発現量増大とJNK活性化抑制が確認された。以上の結果からNF-kappaB、特にp50サブユニットは、TNF-alpha誘導性OLGアポトーシスに対する抵抗性をJNK依存性経路を介して獲得していることを示唆する結果を得、現在さらに詳細な解析を続けている。
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