Nuclear factor kappa beta(NF-kappaB)は中枢神経系細胞に広く存在し、神経細胞のアポトーシスを強力に阻害する転写因子の一つであることが知られている。オリゴデンドロザイト(OLG)においては、NF-kappaBの活性化が様々な侵害刺激により誘導されるという知見から、アポトーシスとの関連性が示唆されていたが詳細は不明であった。そこで培養OLG株化細胞(CG-4細胞)を用いて分子生物学的・生化学的にNF-kappaBとアボトーシスとの関連性を解析した。 NF-kappaB発規プラスミドをCG-4細胞に導入し安定発現株を樹立し、腫瘍壊死因子(TNF-alpha)によりアポトーシスを誘導した。NF-kappaBを発現させたCG-4細胞はアポトーシスに対して著明な抵抗性を示し、その抵抗性はNF-kappaBの阻害蛋白であるI-kappaBの同時発現により消失した。以上の実験結果はNF-kappaBのOLGにおける機能を明らかにしているばかりでなく、その強力なアポトーシス阻害活性が脱髄疾患の治療および機能再生に応用できる可能性を示唆しており、詳細を国際英文誌に発表した。さらにその後NF-kappaBの抗アポトーシス活性作用機序の解明を進めたところ、NF-kappaB発現細胞においてGadd45beta発現量増大とc-Jun amino-terminal kinases(JNK)活性化抑制を確認した。この結果は、NF-kappaBによるアポトーシス抵抗性が、JNK依存性経路を介している可能性を示唆するものであり、現在さらに詳細な解析を続けている。
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