DNA、RNA結合蛋白質で転写、翻訳に関わる多機能蛋白質であるPurαについて、その細胞内局在化が機能発現に重要だと考え、MycもしくはGFP融合蛋白質を神経系培養細胞に発現させ局在を調べた。また、Purαの結合活性がある転写、翻訳因子Y-box蛋白質についての解析も同様に行ったので報告する。 <Purαについて>未分化神経系細胞において、野生型Purαは主に細胞質に局在したのに対し、C末の切断型は核に蓄積することから、細胞質に留まるために必要な領域がC末部に存在し、それ以外の領域に核移行に必要な領域が存在している可能性が示された。細胞質-核間シャトルをしている可能性については、レプトマイシンBを用いて検討した。核外移行配列とGFP融合蛋白質はレプトマイシンBで核に蓄積したが、GFP-Purαの局在変化はみられなかった。この結果はGFP-Purαの核外輸送は、少なくともCRM1/exportin1を介した経路ではないということを示している。 <Y-box蛋白質について>脳で発現しているY-boxタンパク質のcDNAクローンを単離し、融合タンパク質や抗体を用いて発現の変化や細胞内局在について検討した。神経系培養細胞の内在性Y-box蛋白質は細胞質に局在するが、過剰発現させると核へ蓄積すること、切断型が核へ蓄積することから、切断領域内に細胞質アンカー因子との相互作用領域が含まれている可能性がある。動物の生長や神経系細胞の分化処理によってY-boxタンパク質が減少することも見い出しており、未分化、分化細胞でどのようなmRNAと相互作用しているのか興味深い。 今後は、Purα、Y-boxの細胞内局在を規定する領域の解析と共に、結合因子(RNA、蛋白質など)を単離、同定を行う。また、神経細胞を高カリウム処理などで神経活性を高めた時の細胞局在の変化や、転写、翻訳活性に変化がみられるのか検討したい。
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