転写、翻訳制御に関わる多機能蛋白質神経細胞内の局在化が、多機能性制御の重要なステップと考えPurαの局在を規定する分子内領域を特定した。Purα以外の転写、翻訳制御因子であるY-box蛋白質ついても解析を行なったので報告する。 1.Purαについて:種々のPurα変異体の細胞内局在を調べ以下の結果を得た。 (1)PurαのC末領域が細胞質に留まるために必要であった。 (2)レプトマイシンB処理により、核外輸送については少なくともCRM1を介さない。 (3)野生型Purαは細胞質中で複合体を形成するのに対し、C末切断変異型は形成できない。 2.Y-box蛋白質について:脳で発現するY-box蛋白質、rBYB1のcDNAを単離し解析した。 (1)胎児期の脳で既に存在し生後10日目から急激に減少する。 (2)神経細胞の主に細胞質に存在し、RNAを含んだ複合体を形成する。 (3)脆弱性X性症候群の原因蛋白質、FMRPとRNAを介さず結合し、樹状突起でFMRPと一部共局在する。 (4)ポリソーム画分にも分布し、EDTA処理でリボソームを解離させても複合体として存在し得る。 (5)EDTA耐性rBYB1画分に含まれるmRNAをcDNAとしてクローン化し同定した。 (6)(5)のクローン中、チューブリンα1が最も多かった。 (7)チューブリンα1mRNAは抗rBYB1抗体で免疫沈降される。 (8)神経細胞を高K処理すると樹状突起中のrBYB1が減少する傾向が観察された。 Purαは細胞質因子と相互作用することで核への移行を抑制している可能性があり、結合因子と細胞質局在化との関連について解析を進める。rBYB1が複合体中のmRNAの翻訳制御を行なっている可能性について検討する。多機能蛋白質であるPurαの細胞局在化やrBYB1による翻訳制御が、神経細胞分化や刺激応答との関連、さらに脳の発達過程での変化についても解析を進める。
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