本研究課題においては、チロシン水酸化酵素(TH)発現誘導に対してNurr1と協調的に機能する分子を評価する細胞系の構築が重要となる。申請者が平成12〜13年度に受けた前科研費研究課題(奨励研究(A)12780591)における成果として、Nurr1の誘導にcAMP応答配列(CRE)の転写活性が重要であることを示し、さらに神経発達に関わる分子であるV-1/Myotrophinを過剰発現させたPC12D細胞(V-1細胞)においてCRE転写活性およびATF-2のリン酸化依存的な活性化を示した。ATF-2はNurr1プロモーター領域に存在するCREに結合する因子であり、またアポトーシスと細胞分化の二面的な制御を行う因子であることから、Nurr1の機能との密接な繋がりが予想される。そこで、CRE転写活性およびATF-2によるTH発現誘導機構に関する解析を優先的に行った。 最初に、TH活性・タンパク量の調節に関わるGTPシクロヒドロラーゼI(GCH)に関して、V-1細胞におけるCRE依存的なGCH遺伝子転写の上昇を示し、論文発表を行った。次に、ATF-2のドミナントネガティブ体の過剰発現がV-1細胞におけるCRE依存的なTH遺伝子転写の上昇を抑制することを示し、前課題の成果と合わせて論文発表を行った。現在、細胞レベルでのNurr1およびATF-2によるTH発現誘導系の探索および構築を行っており、両者の機能的連関について解析中である。また、COS-1細胞におけるFLAG-Nurr1の発現系においては、免疫沈降実験系の条件検討を進めた。その結果、FLAG-Nurr1に対する免疫沈降物中において特異的に検出されるタンパク質を、Nurr1より高分子側に3つ、低分子側に4つ銀染色レベルで観察している。現在、このタンパク質の同定を進めている。
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