1.raftによる分解とAβ蓄積の関係 Neprilysinノックアウトマウスでは、不溶性のAβが顕著に増加したが、さらに詳細にneprilysinノックアウトマウスのraftの分解活性を解析した結果、raftにはneprilysin以外にも高濃度のthiorphanで阻害されうるAβ分解活性が存在することを明らかとなった。したがって、Aβの産生と蓄積の場となるraftという脂質部位は、neprilysin以外にもneprilysin様酵素が濃縮し、他の脂質部位とは異なる分解の場を与えている可能性がある。これまでに、neprilysin様酵素活性の部は、angiotensin-converting enzyme (ACE)であることを明らかにした。しかし、ACEのノックアウトマウスでは、wildマウスに対して有為なAβ蓄積が認められていないため、現在この原因を明らかにすべく、免疫組織化学的手法を用いて脳内でのACEの局在を検討している。また、今後もACE以外のneprilysm様酵素の同定を進めていく予定である。 2.Neprilysin発現制御機構の解析 Neprilysinの発現制御を検出するスクリーニングの系として、本年度はプライマリーカルチャーを用いた高感度検出法を作成した。この系に種々の神経ペプチドやそのアンタゴニスト、また細胞内情報伝達系に関わる因子やその阻害剤を、短期間プライマリーカルチャーに添加し、neprilysinの活性に与える影響を検討した。これまで、数種類の因子によって有為な活性増加が認められ、このような因子によるneprilysinの活性増加とAβ分解の増加によりアルツハイマー病の治療に利用できる可能性がみえてきた。今後ともスクリーニングを行うとともに、増加が認められたものについては、よりin vivoの検討を行い治療に有効であるか確認していく予定である。
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