今年度は以下の研究を行った。 1:味感度の詳細な測定 嗜好系統、不嗜好系統の様々な塩に対する嗜好性を測定した。その結果、嗜好系統はNa+だけでなくLi+にも嗜好性を示し、その他の1価の陽イオン、K+・Cs+およびRb+には嗜好性を示さなかった。一方、不嗜好系統はこれら全てのイオンに対して嗜好性を示さなかった。また、両系統ともにいずれのイオンにおいても、250mM以上の高濃度の溶液に対しては忌避性を示した。以上の結果から、嗜好性系統の塩嗜好性は全ての塩ではなく、特定の塩に対するものであることが明らかになった。 2:マッピング 遺伝学的手法により、原因遺伝子は、1つの常染色体上の特定の領域に存在することが明らかになった。このことは、原因遺伝子は1つもしくは非常に強く連鎖したごく少数の遺伝子であることを示唆している。さらに染色体欠失変異体を用いた解析により、より詳細なマッピングによれば、原因遺伝子は約200個程度の遺伝子のいずれかであることが明らかになった。 3:遺伝子破壊 得られたマッピング情報から、原因遺伝子近傍にP因子が挿入された系統を、ストックセンターより取り寄せた。現在、それらの系統を用いてP因子による破壊を試みている。 4:電気生理学的解析 予備的な実験から、嗜好系統は不嗜好系統よりも、塩に対して感度の高いニューロンを備えていることが明らかになった。すなわち、嗜好系統は不嗜好系統よりもNa+刺激に対して有意に高い頻度のインパルスを発生する。
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