1.副嗅球僧帽細胞-顆粒細胞間相反性シナプス電流の性質 本研究は、マウス副嗅球の相反性シナプスの性質をさらに解明するため、副嗅球スライス標本を作製し、nystatin穿孔パッチによるホールセル法を用いて各種薬物の相反性シナプス電流に対する効果を膜電位固定下で調べた。当年度は、これまでの行動薬理学的実験からフェロモンの記憶に関与することが示唆されている機能分子の中でも特に重要と考えられる代謝型グルタミン酸受容体2型(mGluR2)に着目し、その相反性シナプス伝達に果たしている役割について調べた。 僧帽細胞に脱分極性の電位刺激を与えると、この僧帽細胞と相反性シナプスを形成している顆粒細胞が興奮して抑制性の相反性シナプス電流を発生する。 Mg^<2+>非存在下で調べた全ての細胞(n=4)において、DCG-IV(mGluR2作動薬)の細胞外投与により、相反性シナプス電流は903±266pA・sから101±25pA・s(Mg^<2+>非存在下で記録された電荷の11.2±2.8%)へ顕著に抑制された。ただし、200〜300nM DCG-IVを用いた場合、相反性シナプス電流に対する抑制効果は可逆的であったが、500nM DCG-IVの場合は不可逆的であった。 一方、Mg^<2+>存在下において20nM LY341495(mGluR2拮抗薬)を投与すると、相反性シナプス電流は101±38pA・sから158±61pA・s(n=4;Mg^<2+>存在下で記録された電荷の151±5%)に増加した。また、Mg^<2+>存在下において別のmGluR2拮抗薬のMSOPPEを同様に投与すると、相反性シナプス電流は46±4pA・sから63±7pA・s(n=3;Mg^<2+>存在下で記録された電荷の146±33%)に増加した。これらの結果は、mGluR2が個々の細胞レベルにおいて僧帽細胞-顆粒細胞間相反性シナプス伝達に重要な役割を果たしていることを示唆した。
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