研究概要 |
新生ラットの脳幹-脊髄-胸郭摘出標本において灌流液のpHを7.4から7.1まで減少させると呼息相前半に内肋間筋の呼息性活動が誘発される。本研究では新生ラットの脳幹-脊髄(-胸郭)摘出標本を用い胸郭内の呼息性活動の分布について検討した。第1,3,5,7,9,11肋間の内肋間筋および第13肋骨よりやや尾側の内腹斜筋より同時記録した。6例全例で低pH溶液(pH7.1)の投与はすべての内肋間筋および内腹斜筋に呼息性活動を誘発させた。低pH溶液を投与し続けても徐々に活動が消失するが、吻側の内肋間筋ほど先行して消失した。内肋間筋や内腹斜筋の筋電図を呼息性活動の基準にする場合、筋収縮により細胞内記録が困難である。我々は、第13胸髄前根が内肋間筋の呼息性活動に一致した活動を示し、吸息性活動を示す場合でも極めて小さいことを見出した。それゆえ次に第13胸髄前根の記録を呼息相の基準とし、第1,3,5,7,9,11胸髄前根より同時記録した。通常pH溶液下では第13胸髄前根以外、顕著な吸息性活動を示した。低pH溶液の投与は各胸髄前根に呼息性活動を誘発した。波形を整流し、高カリウム溶液下で得たノイズの平均値を差し引いた後、吸息相と呼息相におけるデータ値の総和を求めた(サンプリング周波数2KHz)。吸息相の総和値に対する呼息相の値の比率を求めると、第1,3,5,7,9,11胸髄前根それぞれ0.10±0.06,0.27±0.08,0.52±0.15,0.89±0.34,1.09±0.55,1.56±0.48(平均±標準偏差、n=5)であった。隣り合う体節間で比較すると、第7-第9胸髄前根間以外の組み合わせすべてで尾側の前根ほど比率が有意に大きかった(P<0.05)。これらの結果は、摘出標本においてin vivoと同様の適切な呼息性運動出力を行なう神経機構が保持されていることを示唆する。
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