本年度は所属機関が女子医科大学から東京大学に変わったため、実験系の再構築をメインに行った。 1.電気生理学的計測系の構築 本研究では嗅球僧帽細胞群の発火活動を多チャンネル同時記録する技術の確立が必要不可欠である。電極にはミシガン大学製4本並列テトロード電極を用い、本申請で購入した多チャンネル増幅器一式(MEG-6116M:日本光電社製他)を中心とした細胞外ユニット記録系を立ち上げた。ウレタン麻酔下のラット(Wister ♂:190-210g)を脳定位固定装置にセットし、テトロード電極を嗅球背側部に刺入した。直鎖状アルコール、直鎖状脂肪酸を匂い刺激として用いたところ、それぞれの匂いに応答する僧帽細胞群のスパイク発火応答が記録できた。現在、直鎖状アルコールに応答する細胞群と、直鎖状脂肪酸に応答する細胞群の同時期録を試みている。また、同期発火活動の解析に必要な記録時間(〜1時間)の連続記録を可能にするためにセットアップを改善している。また、行動中のラット僧帽細胞から慢性記録を行うために超小型マイクロマニピュレータ立ち上げも同時に行っている。 2.行動解析系の構築 本研究の最終的目標である匂い経験(学習)に依存的な僧帽細胞の発火活動の変化を捕らえるために、申請書にあるような十字迷路による匂い識別訓練系を立ち上げている。平成15年1月に十字迷路が完成し、現在、ラットをトレーニング中である。3月中旬に最初の一群のラット(5匹)が匂い識別訓練を終える予定である。これらのラットを用いて、僧帽細胞の匂い刺激に対する同期発火活動を記録する予定である。
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