本研究補助金により静音型の脳機能画像撮像法に関する研究を行い、その成果を2003年に発表した。同時に撮像プログラムの開発環境を整備し、励起パルス印加時間を任意にコントロールできるプログラム作成し、EPI撮像時に生じる騒音を低下させる方法を開発した。本手法を用いることで、観察対象領域の縦磁化を定常状態に保ったまま、1秒単位の任意のタイミングで励起パルスと傾斜磁場を独立して印加でき、撮像継続中に一時的ながら撮像音圧を1/10に低減することを可能とした。全脳計測に十分と考えられる20断面には達しなかったが、1秒で16断面の撮像ができ、全大脳を計測可能である。本手法を用いて、一次聴覚野における血流の加齢性変化を研究した。その結果、加齢に伴い賦活による脳血流増加が一次線形的に遅延することが判明した。運動野・視覚野では加齢により、賦活に伴う血流増加の遅延は無いと報告されており、聴覚野における新たな知見である。この結果は2003年に第9回国際ヒト脳機能マッピング学会で報告した。現在投稿準備中である。 更に現在、近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)との同時計測を行っている。NIRSをトリガーとして脳機能画像の撮像を行うことで、更なる撮像音の低下を目指している。しかし現時点ではNIRSの計測値の変動が大きく、これを安定させるための研究が必要となっている。 こうした研究と平行して、撮像制御プログラムでは対処できない撮像音圧を低減させると同時に強磁場のもとで良好な聴覚刺激を呈示する手段として、新たに外耳道内に設置可能な非磁性体の外耳道内スピーカーを開発した。その外部に遮音素材を設置して一層の遮音効果を達成すると同時に効率的な音刺激の提示を行うことが可能となった。現在その性能評価をまとめているところである。
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