14年度は、「倒立顔認知機構の解明」と「視線の異なる顔を認知するときの脳活動」を中心に研究を進めた。 「倒立顔認知機構の解明」に関しては、脳磁図に脳波を併用した実験を行いその結果を詳細に検討した。顔認知には側頭葉腹側(紡錘状回)のみならず側頭葉外側(上側頭溝付近)も同時に活動していることが示唆される所見を得た。また、誘発反応の時間的過程の検討により、正立顔は主として右半球で情報処理されるが倒立顔はむしろ左半球が優位であること、その相違は側頭葉の上側頭溝付近ではなく紡錘状回の活動による可能性が高いことを示唆する所見を得た。この結果を論文にまとめ発表した(Watanabe et al. Neuroscience 2003)。 「視線の異なる顔を認知するときの脳活動」は、ヒトの社会的コミュニケーション能力にも関わり現在大変注目されているテーマである。今後MEGとfMRIを併用して研究を進めるための予備研究として、脳波による実験をおこなった。脳波で顔認知特異的成分とされている誘発反応について、「目が合っている」顔を見た場合と「視線がそれている」顔を見た場合で比較すると、その振幅に有意な違いが生じた。すなわち、目がそれている顔を見たときのほうが、振幅が増大していた。反応の潜時に違いはなかった。視線の違いにより、顔認知反応に何らかの相違が生じていることが明らかとなった(Watanabe. et al. Neuroscience Letters 2002)。今後は、脳磁図、fMRIを中心に他のイメージング手法を用いてさらに研究を進めていく予定である。
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