小脳プルキンエ細胞での発現を規定する転写制御領域を探索した。前年度は、IP3R1あるいはGAD67遺伝子のゲノム領域約100kbではプルキンエ細胞での発現を誘導できないことを明らかにした。 今年度は約170kbのGAD65遺伝子領域を含むBACを単離し、転写活性化能を持つGAL4VP16遺伝子及びレポーターUAS : DsRed2をGAD65遺伝子5'UTRに挿入した。これを受精卵に顕微注入しDsRed2の発現を蛍光観察した。DsRed2は脊髄から前脳にかけて神経管の主として腹側領域に発現し、GAD65 mRNAの発現領域との重なりが示唆された。単一細胞レベルで調べる為にはゼブラフィッシュGADを認識する抗体が必要であるが、試みた抗体は特異的なシグナルを出さなかった。抗体探索の継続が必要。背側領域においては小脳にDsRed2の発現が観察された。IP3R1抗体で凍結切片を免疫染色し共焦点蛍光顕微鏡で観察した結果、プルキンエ細胞ではなく隣接細胞であることが明らかになった。この細胞は抑制性の介在神経細胞あるいはグリア細胞の可能性がある。 前年度に作製したzic1トランスジェニック(Tg)フィッシュの解析を行った。GFPは小脳で散在的に観察され、顆粒細胞のごく一部に発現していることが示唆された。小脳における発現は個体差が大きかった。一方、小脳以外の後脳では背側の交連性神経細胞に安定してGFPが発現した。軸索は正中を超えた後、吻側へ鋭角に曲がり中脳腹側に終止した。この繊維束および投射領域は成魚における外側縦束および半円隆起に相当すると考えられ、側線および聴覚系の中枢伝達回路を可視化していることが示唆された。神経活動依存的にシグナルを変化させるGFP誘導体をUAS下流に結合したUAS : cameleonおよびUAS : G-CaMPのTgフィッシュとの交配により、神経活動の観察が可能になった。
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