研究概要 |
筋紡錘由来の一次求心性線維(la群線維)とその同名筋を支配する運動ニューロンからなる伸張反射路の形成には、両者共通の末梢標的である筋由来の因子が重要な機能を持つと考えられているが、その作用機序は不明である。 新生動物の末梢神経を切断すると、それを支配する運動ニューロンと後根神経節(DRG)ニューロンにアポトーシス性の細胞死が誘発されることが知られている。我々は出生直後のマウスの坐骨神経を切断し、1週齢の支配運動ニューロンの細胞死を形態学的に解析した。アポトーシス制御遺伝子Baxの欠損マウス(Bax-/-)と野生型の比較から、運動ニューロンの細胞死はBax-/-で抑制されることを明らかにした(Kinugasa, et al., '02)。本年度の研究より、Bax-/-では、坐骨神経切断によるDRGニューロンの細胞死も抑制されることが示唆された。さらに、主に坐骨神経へ軸索を送る第4腰髄背外側部の運動ニューロンとそこへ投射する一次求心性線維(la群線維)の形態学を二重染色法により解析した。その結果、Bax-/-の第4腰髄背外側部において、la群線維から運動ニューロンへの投射が、坐骨神経の切断によって両者と末梢標的の連絡が断たれた状態でも保存されていることが明らかとなった(Kinugasa, et al., Soc.Neurosci.Abstr., '02)。現在、Bax-/-で保存されていたこの神経投射について、髄節性反射のシナプス結合が正常に機能的しているかを電気生理学的手法により解析している。これにより、新生動物の伸張反射路の機能調節における末梢標的の役割の一端を解き明かすことができる。
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