研究概要 |
大脳基底核線条体の持続的発火細胞(TANs)は、行動を行った後報酬や嫌悪刺激が現れることを予め知らせる感覚事象に特異的に応答することが示されており、コリン作動性の介在細胞であると推定されている。ただし、コリン作動性の介在性細胞であることを直接証明した実験はない。本研究ではウレタン麻酔下のラットで、ガラス微小電極の先端を神経細胞に接触するようにして自発発火を記録しながらNeurobiotin(Nb)を電気泳動的に注入する方法(juxtacellular staining)と、コリンアセチル基転移酵素(ChAT)免疫染色法を組み合わせてコリン作動性神経細胞とその自発発火パターンの関係を明らかにする実験を行った.自発発火パターンをスパイク間インターバルヒストグラムにより解析した結果4つのグループに分類できた.スパイク間隔が10ミリ秒以内でおこるバースト状発火が多いグループ(Burst)の細胞にNbを注入したところ,全ての細胞でスパインの多い樹状突起が確認された.さらにこれらの細胞をGABA抗体で染めたところGABA陽性を示した.このとことから,BurstグループはGABA作動性の投射細胞であることが明らかになった.5ヘルツ前後で自発的な発火パターンを示すグループ(これまでの研究からコリン作動性細胞と想定されている)にNbを注入できた細胞について免疫組織学的に解析したところコリン作動性であることが明らかとなった.以上の結果から線条体の持続的発火細胞はコリン作動性であることを裏付ける事ができた.さらに,持続的発火細胞の発火パターンをスパイク間隔ヒストグラムにより解析したところ,単峰性を示すタイプと二峰性を示すタイプがあることが分かった.この知見を慢性記録実験を行っているサルの線条体から記録されるTANsに当てはめてみるとサルのTANsにも単峰と二峰性があることが明らかになった.二つのタイプの機能的な差異を調べてみたところ,二峰性細胞の方が単峰性細胞よりも感覚刺激に対する反応性が強いことが明らかとなり,二種類のTANsが存在する可能性を示唆する結果を得た.
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