NOD-scid・IL-2Rγノックアウトマウス(以下NOGマウスとする)はT-、B-両細胞不全に加え、NK細胞もなく異種細胞の受容性が従来の免疫不全動物より格段に高いマウスである。本研究ではヒト癌の増殖・進展・転移を解析するための極めて再現性のあるin vivoモデルを確立することを目的としている。 NOGマウス及びNOGマウスの遺伝的背景であるNOD-scidマウスに3株の大腸癌培養細胞株(SW480、SW403、HCT116)を1×10^4cells/匹、脾内移植する実験を行い、本マウスの有用性を検討した。移植6週間後、各マウスの肝臓を肉眼的観察したところ、NOGマウスにおいては3株全例に転移巣が認められた。いっぽうNOD-scidマウスにおいてはNOGマウスとは逆に3株全例において全く転移巣が認められなかった。このことからNOGマウスはSCIDマウスと比べ、異種細胞の受容性が極めて高いことが分かった。 ヒト癌細胞の免疫不全動物移植系では、転移形成は極めてまれである為、これまでヒト癌転移モデルとして十分なものがなかった。本実験においては1×10^4cellsという従来より少ない細胞数で転移が確認されたことからも、ヒト癌の増殖・進展・転移がより簡便に再現性良く解析できる肝転移モデル系を新たに開発できる可能性が示唆された。
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