NOD-scid・IL-2Rγノックアウトマウス(以下NOGマウスとする)はT-、B-両細胞不全に加え、NK細胞もなく異種細胞の受容性が従来の免疫不全動物より格段に高いマウスである。本研究ではヒト癌の増殖・進展・転移を解析するための極めて再現性のあるin vivoモデルを確立することを目的としている。 NOGマウス及びNOGマウスの遺伝的背景であるNOD-scidマウスに8株の大腸癌培養細胞株(SW480、SW403、HCT116、HT29、LS174T、COLO320DM、WiDr、LoVo)を1×10^4 cells/匹、脾内移植する実験を行い、本マウスの有用性を検討した。移植6週間後、各マウスの肝臓を肉眼的観察したところ、NOGマウスにおいては8株全例に転移巣が認められた。いっぽうNOD-scidマウスにおいてはNOGマウスとは逆に8株全例において全く転移巣が認められなかった。また、NOGマウスのみ移植細胞数を1×10^2 cells/匹までおとした実験でも8株全例に転移巣が認められた。このことからNOGマウスはSCIDマウスと比べ、異種細胞の受容性が極めて高いことが分かった。 従来の免疫不全動物を用いたヒト癌の転移モデルでは、移植細胞数が10^6 cells/匹レベルを要し、また再現性に十分なものがなかった。本実験では1×10^2 cells/匹の移植で肝転移が確認された。ヒト大腸癌の肝転移がより簡便に再現できる新たなモデルに開発できる可能性が示唆された。
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