研究概要 |
平成14年度は,電磁ノイズが混入した通信画像を視聴者が情報として取り込むことに与える影響を生理信号計測から検討することを目的とし,計測システムの構築と,生理信号計測法を本研究に導入するための基礎実験を行った。構成した計測システムは,パターン発生器としてのDVDビデオレコーダ,8チャンネル計測ステーション(設備備品として計上),複合ノイズ発生器,5チャンネル高感度増幅器,およびディジタルオシロスコープ,CRTテレビモニタ(現有物を使用)からなる。そして,生理信号として脳波に着目して,映像信号にバーストノイズを混入してテレビモニタ上に呈示し,視覚誘発電位(VEP)と事象関連電位の一つである認知・判断に関係するP300成分を測定した。被験者は大学生10名とした。電極配置は国際10-20法に従い,探査電極を前頭部Fzと頭頂部Pz,基準電極を左右の耳朶,接地電極を鼻根部近傍とした。測定した脳波波形から誘発電位を抽出するために,ノイズ混入の100ms前から1s間を一試行として加算平均処理を行った。ノイズを周期的に発生させてVEPを測定した結果,VEPの振幅とノイズの実効値に相関関係が得られた。また,ノイズ出現時にボタンを押させるオドボール課題を与えた結果,P300が確認できた。ノイズの発生間隔がP300に与える影響について検討した結果,繰り返しからノイズの発生を予測させないためには,5s程度の間隔とある程度のランダム性にするとよいことが明らかとなった。そして,ノイズによるテレビ画像妨害を,「邪魔である」と「邪魔でない」で主観評価したときに生じる誘発電位を測定した結果,「邪魔である」と評価したときの方がP300の振幅が大きく,有意な差が得られた。P300の振幅が妨害の感じ方の違いによって異なり,主観評価と対応付けられる可能性が得られた。
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