研究概要 |
バーストノイズのパラメータ(実効値と継続時間)を変化させて,テレビ画像に重畳したノイズ妨害を主観評価したときの脳波(認知・判断と関連がある事象関連電位P300)を,平成14年度に構築した測定システムを用いて測定した。主観評価は「邪魔でない」,「わずかに邪魔である」,「邪魔である」の3段階で行った。被験者は大学生10名である。P300の潜時については主観評価(MOS)と有意な関係が得られなかったが,P300の振幅は「邪魔である」と評価したときに最も大きく,有意な差が見られた。また,バーストノイズの実効値,および継続時間の増加に伴い評価値(MOS)が低下しており,この傾向は5段階妨害尺度を用いたこれまでの実験結果と同じであった。P300の振幅の違いは評価,つまり妨害の感じ方の違いによって生じたと考えられ,ノイズによる妨害度の客観評価にP300を用いることができる可能性が得られた。 次に,ストレスが自律神経系を介して心臓の拍動数に変化を生じさせることに着目し,テレビ画像に重畳したノイズ妨害と心電図(ECG)上のRRI(R-R Interval)を指標とした心拍変動の関連を検討した。テレビ画像にガウス性ノイズを60秒毎に10秒間重畳させてECGを測定した。被験者は大学生5名である。画像にノイズが重畳してもRRIの変化は見られず,ノイズ妨害による心拍変動への影響を確認することはできなかった。一方,パターン反転刺激(反転間隔100msの白黒チェッカー画像)を与えた場合,個人によってRRIおよびその揺らぎに違いがあるが,刺激を受けるとRRIは短くなり,すぐに刺激前の状態に戻る傾向が見られた。本実験でテレビ画像に重畳したノイズはRRIに影響を与える強いストレスではなかった,あるいは心拍変動の変化が小さいために検出できなかったと考えられる。
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