昨年度に引き続き平成15年度においても、マウスES細胞由来腎臓原基細胞の探索を進めた。特にin vivoの系に重点を置いた。 (1)マウスES細胞由来奇形腫における腎臓発生必須遺伝子の検出。 マウス胚様体由来細胞をヌードマウスの後腹膜下に移植し、14日目の奇形腫から抽出したtotal RNAについて、RT-PCR法により腎臓発生必須遺伝子群の発現を調べた。その結果、昨年度マウスES細胞由来胚様体での発現を報告したPax2、lim1、WT1、Sall1、Eya 1に加え、GDNF、c-Ret、Emx2、Wnt-4の発現を確認した。いずれの遺伝子も腎臓特異的ではなく他の器官にも発現することから、腎臓原基細胞の存在を直接的に証明するものではないが、ES細胞由来奇形腫中に、腎臓原基細胞が分化誘導されている可能性を支持する結果が得られた。 (2)マウスES細胞由来奇形腫における腎臓原基構造の検出。 上記奇形腫において、組織化学的手法による腎臓原基構造の探索を行った。尿管芽や中腎管を検出するPax2抗体、TROMA-1抗体、DBAレクチンに加え、腎臓特異的とされるKsp-cadherinに対する抗体を使用した。その結果、奇形種内に上記抗体、レクチン全てに反応陽性の管状構造を検出した。これらの管状構造は、二分枝パターンで分枝しており、尿管芽や中腎管に極めて類似した組織化学的・形態学的特徴を有することが分かった。また管の一部には、中腎ネフロン類似の曲細管が付随して認められた。これらの構造の出現率は低いものの、後腎発生のKeyとなる組織構造が、ES細胞から分化し得ることを証明するものであり、腎臓再生を考える上で大変興味深い。しかし現時点で後腎ネフロンは未検出であり、次年度へ向けての課題となる。 研究成果の一部は、現在Am J Physiol-Renal Physiolに投稿中である(revision)。
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