研究概要 |
レーザー照射中の生体組織の「動的」光学定数データベース化のために,平成14年度は次の3つの基礎研究を行った.(1)レーザー誘起超音波計測による光学定数導出の原理実証.超音波領域の誘起音強度には照射中の組織の吸収係数の情報が含まれている.レーザーに自由電子レーザー(FEL),サンプルに生体組織の擬似モデルとして水を用い,5-7μm領域(O-Hの変角振動)の吸収係数を導出した.観測結果と常温・大気圧下の水の吸収特性(文献値)との比較より,誘起音は照射中の温度に依存する「動的」光学定数に関する情報を有していることが明らかとなった.誘起音の絶対値計測によって「動的」光学定数を導出できる.(2)パルス切り出し装置導入.誘起音の絶対値計測には応力閉じ込めを起こす必要があり,FELの短パルス化が求められる.これはパルス切り出しによって実現できる.パルス切り出し装置の導入を行い,切り出し効率が広帯域に渡り50%以上であることを明らかにした.応力閉じ込めのための短パルス化,即ちパルス切り出し装置の高速化については次年度で行う計画である.(3)放射温度計による照射中の光学定数導出の原理実証.その他の照射中の光学定数計測技術として放射光の時間発展から求める手法がある.FEL波長域9-11μm(P-O結合の伸縮振動),サンプルは牛歯象牙質を用い,放射温度計による光学定数導出の原理実証を行った.観測結果から,放射温度計から導出された光学定数は照射中の象牙質の吸収特性の変化に対応していることが分かった.このように放射温度計からも「動的」光学定数の計測が可能であることを確認した.放射温度・誘起音計測の比較によって光学定数の絶対値の妥当性を検証できる. 以上の(1).(3)によって動的光学定数の計測ための準備がほぼ整った.平成15年度はこれらの計測手法を用い,歯牙硬組織の光学定数データベース化を試みる.
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