様々な高分子膜上に生理活性物質であるインスリンを生産するMIN6細胞(ラット由来β細胞)を培養して、細胞の増殖とグルコース濃度に対応したインスリンの生産性から細胞の足場となる基板の細胞への影響を検討した.さらに、どのような細胞培養用膜が細胞増殖に適しているのか、MIN6細胞の成長並びにグルコース濃度に対応したインスリンの生産性と高分子膜の特性との関係を解明することが本研究の最終目的である。 細胞培養膜基板として、フィブロネクチンの細胞接着活性ドメイン配列Arg-Gly-Asp (RGD)を含む絹フィブロイン模倣ペプチド膜基板を調製した。様々なRGD含有絹フィブロイン模倣ペプチドを、ヘキサフルオロアセトン(HFA)の溶媒でそれぞれcast法により製膜して、細胞培養膜基板として用いた。これらの基板上にMIN6細胞を培養して、細胞の増殖と形態観察を行なった。また、ELISA法を用いて高グルコース状態並びに低グルコース状態においてインスリン濃度を測定した。培地中に存在する異なるグルコース濃度(3.3mM並びに25.0mM)に対するMIN6細胞からのインスリン生産性と細胞培養基板である様々なRGD含有絹フィブロイン模倣ペプチド膜基板との関係を検討した。培地中のグルコース濃度が低グルコース濃度である3.3mMよりも高グルコース濃度である25.0mMと高い方が、MIN6細胞からのインスリンの生産性はin vivoの状態と同様に高くなることが観察された。また、絹フィブロイン模倣ペプチド中にRGD部位が存在する基板上での方が、インスリンのグルコース濃度に対応した生産応答性は優れていることが観察された。
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