研究概要 |
人工臓器の抗血栓性を開発の初期段階にin vitroである程度検証できれば開発・改良の高速化が期待でき,また動物実験もより効率的に行なえると考えられるが,そのような回路および評価手法は世界でも全く確立されていない.そこで本研究では,1)完全大気非接触型,2)生体の左心系の圧力・流量特性に合致した拍動流型,3)評価データの信頼性向上のために評価部位外の血液接触面を抗血栓性材料で完全コーティングの3項目を実現可能な評価回路を開発することを本年度の目的とした. 最終的な回路仕様は,3つの同一形状の旋回渦流型血液ポンプとセグメント化ポリウレタンで製作した大動脈コンプライアンスチューブで構成する一巡閉鎖回路とした.1)1つのポンプのみを駆動し,他の2つのポンプのダイアフラム部にコンプライアンス及びリザーバ要素としての機能を持たせるという新コンセプト,及び2)厚さによって大動脈部位の脈圧を調整可能なチューブをセグメント化ポリウレタンで製作することで,完全大気非接触でありながら生体の左心系の圧力・流量特性に合致した波形を作り出すことに世界ではじめて成功した.また,Washout性能の極めて良好な旋回渦流型血液ポンプを構成要素として用いることで,回路内の流れの停滞領域を排除することが可能となり,材料の抗血栓性評価に適した回路を開発できた.さらに,回路構成用血液ポンプを真空成形法で製作することで,現在1個につき1時間以内で製作可能となり,大量生産システムも同時に確立できディスポーサブルとして使用可能となった.そこでさらに,第1段階として新開発した回路を2つ用意して回路内面を2種類の異なる材料でそれぞれコーティングして新鮮ブタ血液を4時間流すという比較実験を行なった.その結果,2つの材料の抗血栓性の差異を明確に示すことができ,同時に開発した回路の有用性が示唆することができた.
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