研究概要 |
本研究は,視覚誘発電位(VEP)を用いて視覚M/P経路特性の短時間計測法の開発を目的とした.本年度は,色刺激に対するVEP中のM/P経路応答成分について検討した. M経路が応答する低空間周波数の輝度変調刺激およびP経路が応答する高空間周波数の輝度変調刺激に対するVEPの解析を行った.刺激は第2,3色盲混同色である赤緑および青黄の縦縞模様とし,この色度を一定時間周波数(4〜32[Hz])で反転させた.それぞれの時間周波数について,異なる空間周波数(0.1〜4[c/deg])に対するVEPを測定し,比較した.視覚疾患を持たない色覚健常者8名を対象とした.この結果,おおむね6[Hz],2[c/deg]の刺激に対するVEP応答が最大振幅を示し,時空間周波数の増加に伴い,振幅が低下する傾向が示された.高空間周波数刺激では,VEP応答の時間周波数特性は4〜8[Hz]で最大となるバンドベス型であり,P経路応答特性を示していた.さらに,低空間周波数刺激のVEP応答振幅は,時間周波数特性はローパス型であり,これもP経路応答特性を反映していると考えられた.したがって,色刺激によるP経路応答特性の抽出が可能であることが確認できた. 次に,前年度実施したPRBS刺激によるVEP計測との組み合わせ,及び非線形解析によるM/P経路の同時刺激・分離応答抽出については,予備実験にとどまり,妥当性を示すに十分な実験実施にはいたらなかった.しかし,本研究者による過去の研究報告および他の研究報告をふまえると,前年度に確認した高時間周波数の運動刺激(M経路応答検出)と,本年度P経路応答を得ることを確認した色刺激を組み合わせて,独立な疑似ランダム系列による反転刺激を作成し,これに対するVEP応答に非線形解析を適用すれば,M/P経路応答を分離抽出するととは十分に可能であるといえ,今後検証を進めていく予定である.
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