研究概要 |
不完全対麻痺患者のための歩行訓練システムは,歩行訓練中の下肢の状態を計測し,歩行改善に有用な情報を麻痺者に呈示して,歩行訓練をサポートするシステムである.本研究では,歩行中の下肢の状態を計測するセンサシステムの構築および波形処理方法の確立を目的として,健常者における歩行動作を測定し,各センサから得られたデータを解析した.歩行動作を計測するセンサシステムは,1個の2軸加速度計(ワコー,PRG高感度用),3個の1軸圧電式ジャイロスコープ(村田製作所,ENC-03J),1個の衝撃センサ(村田製作所,PKS1-4A1)から構成され,左側下肢に取り付けられた.また,参照データを得るため,ゴニオメータ(Penny&Gilles, ADU301A)により膝と足関節の角度を計測し,足の接地のタイミングを計測するために爪先と踵に装着したアルミ箔と床上のアルミ板との接触状態を計測した.3名の健常者において,幅1m,長さ6mのアルミ板上で異なる歩行速度での歩行動作を測定した.ジャイロ間の出力の差分により得られる関節角速度を数値積分し,膝と足関節の関節角度を求めたところ,ゴニオメータの出力と似た波形が得られた.また,衝撃センサの出力にデジタル微分を施すことにより,アルミ箔により検出される接触状態と同様に,立脚期と遊脚期を分離できる可能性があると考えられる.一般的に歩行動作の計測に用いられるゴニオメータやフットスイッチは,装着の仕方により出力がばらつき破損し易い欠点を有する.本研究で用いたセンサはいずれも小型軽量で装着が容易であり,装着の仕方による出力のばらつきが少なく,また床と非接触で破損し難いので有用性が高いと思われる.これらの歩行実験の結果から,ジャイロや衝撃センサを用いることにより立脚期の開始のタイミングや関節角度など歩行訓練に有用な情報を得られる可能性があることを確認した.
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