研究課題
分子内に脂質部分とビオチンを持っビオチン脂質は、プラスチックディッシュなどの疎水表面にコートして用いることにより任意のタンパク質を固定化することができると考えられる。即ち、合成したビオチン脂質を培養基材に直接固定化し、ビオチン-アビジンの高い親和性を利用すると、アビジン標識したタンパク質や、アビジンを介してビオチン標識したタンパク質を培養素材に固定化することが可能となる。また、アビジンとの親和性はあるが、ビオチンに比べて結合定数が小さいHPQペプチド配列を利用することにより、培養素材からタンパク質を徐放することが出来ると考え、本研究を行っている。ビオチン脂質は、人工脂質とビオチンを既知の方法で縮合し、得ることが出来た。また、HPQペプチド脂質は、同じ人工脂質にFmoc-アミノ酸を順次縮合し脱保護することで得た。合成したビオチン脂質とHPQペプチド脂質は、各々、表面プラズモン共鳴装置を用いてストレプトアビジンとの相互作用を測定した。キュベットの疎水表面に固定化したビオチン脂質はストレプトアビジンと非常に強い相互作用を示した。次いで、ビオチン脂質に結合したストレプトアビジンへのタンパク質の固定化を検討した。固定化するタンパク質として、ビオチン標識したコンカナバリンAを用い、同様に表面プラズモン共鳴装置を用いて結合能を測定し、固定化出来ていることを確認した。さらに、固定化したコンカナバリンAがレクチンとしての機能を保っていることを確認する為に、ハイマンノース型の糖鎖を持つリボヌクレアーゼBとの相互作用を測定した結果、レクチン-糖鎖間の弱い相互作用が確認できた。一方、HPQペプチド脂質は、バッファーで洗浄後、徐々にストレプトアビジンを解離し、弱い相互作用(K_D=1.45x10^<-5>M)を示したことから、タンパク質の徐放に使用出来ることが示唆された。
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