研究課題
特別研究促進費
博物館運営(ミュージアム・マネジメント)を捉える枠組みを検討した結果、経営学的の知見を活用して、(1)オペレーション(日常業務の遂行)と(2)マネジメント(管理)に、(3)ガバナンス(統治)という観点を加えた三段階の概念整理が有効であることを確認することができた。また、アメリカの博物館等の現地訪問調査によって、個々の博物館における運営体制や評価手法、地域社会との関係づくりなどについて各種の情報を得ることができ、共通的な運営の特徴として、(1)使命(ミッション)や計画(ストラテジック・プラン)が明確になっており、(2)来館者の視点による評価が継続的に実施され、(3)評価結果が博物館運営の改善のために効果的に活用されていることがわかった。加えて、アメリカには博物館協会をはじめとして全米規模の各種団体が存在し、個々の博物館の運営を効果的にサポートしていることもわかった。アメリカの美術館におけるインターンシップの実態についても情報を得ることができた。他方、国内の状況に関しては、独自の取り組みを行っている博物館等についての見学調査を行ったほか、日本博物館協会等の大会に参加するなどして、個別の施設の状況だけでなく、全体的な傾向やサポート体制について情報収集に努めた。また、国立科学博物館が実施している「ミュージアム・マネージメント研修」について、これまでの受講者を対象として追跡調査を実施した。2年間の調査研究を通して、望ましい博物館運営のためにはオペレーション・マネジメント・ガバナンスの有機的連携が重要であることがわかった。日本においては、ガバナンスに関する研究を充実させるとともに、個々の博物館運営を側面からサポートする制度を構築することが望まれる。
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