研究課題
本研究班は、急増する児童虐待に対して学校現場がどのような対応をするべきか、また、教育行政サイドはどのような現場支援の体制や教員養成上での配慮をするべきかについて検討し、政策提言をすることを目的として組織された。結成後に二度にわたって調査研究の方向性について討議を行った。この間、文部科学省児童生徒課を通じて全国の都道府県教育委員会を対象に、学校現場での児童虐待への取り組み状況、啓発資料の作成状況、各地域教育委員会との連携のあり方について質問紙調査を行った。結果、児童虐待はすげに学校現場で問題意識をもって受け止められていることが推察できた。この結果を踏まえて、具体的な調査の内容について検討を加えた。その際、(1)学校という組織が抱える構造的な問題ゆえに通報やその後の連携に支障をきたす要因があるのかどうか(2)校種や経験年数といった教員の個人的属性が児童虐待への対応の水準とどのような関連を示すのか(3)教職経験のない初任者における児童虐待への知識水準と、現職教員の知識水準にはどの程度の違いが見られるのか、という点で重要視された。これらは、今後の教育行政施策の中で、学校現場に対する教員加配等を含めた具体的支援の基準策定、現職教員研修及び教員養成過程での児童虐待問題の取り扱い、対応チームの中で学校が果たすべき役割の吟味、につながる課題と考えられた。そこで、初年度から第2年度にかけ、全国の現職教員約5000名と、初任者研修受講者約2500名を対象とした質問表を作成し、調査を実施した。質問表の作成ならびに配布先の決定にあたっては、先に実施した都道府県教育委員会対象の調査結果をもとに、先進的・特徴的な取り組みをしていると判断された7カ所の教育委員会から担当者を招いてヒアリングを実施し,意見集約を行った。