本年度の研究実績は、大きく三つに分けられる。 一つは魏晋南北朝期における爵制と天下秩序の関係に関するもので、童嶺主編『皇帝・単于・士人──中古中国与周辺世界』(中西書局、10月刊)上にて、「皇帝的天下与単于的天下」と題する論文を発表した。 いま一つは「化外」をキーワードとしながら魏晋南北朝諸王朝の内外観を考察しつつ、同時に漢代・唐代との比較を試みたもので、6月に六朝政治史研究会において報告した「漢晋南北朝における「化外」の範囲とその変容」が一例である。この方面の研究は、冊封体制形成史を再考するものと位置づけうる。 三つ目は魏晋~隋唐期における中国王朝と近隣諸地域との関係に焦点を当てたもので、5月に首都師範大学で開催された「中古中国的政治与制度」学術研討会において報告した「中国中古楽浪郡形象的変遷」などがこれにあたる。 このほか、日本国内各地において、漢魏晋期のいわゆる「異民族印」や、平城京をはじめとする都城遺址、大宰府などの古代東アジアの国際交流に関連する遺跡、魏晋南北朝史研究に関する岡崎家旧蔵書など、各種遺物・史跡・史籍の実見調査を実施した。
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