ダイヤモンド、グラフェンなど炭素材料は、次世代材料として大変期待されている。ナノダイヤモンドは、高性能な電子放出源として、期待されている。しかし、電子放出箇所、電流のパス、ドーピングの効果など、様々なことが理解されていないのが現状である。本研究課題では、インドのCVDで作製したナノダイヤモンド(UNCD)を我々の原子間力顕微鏡(AFM)装置へ入れ、それらにドーパントを導入し研究を行った。Pt原子をドープしたUNCDをAFM、走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて詳しく解析した。AFM測定によって、表面の凹凸情報を得ることができ、ナノダイヤモンドとPt粒子の存在を確認することができた。これは、共同研究先の台湾で行った透過型電子顕微鏡の結果と整合性のある結果であった。さらに、AFMと同時にSTM観察を行い、表面の電子放出サイトを同定することができた。具体的には、粒界において、より効率よく電子の放出が観測され、sp2様のグラファイト領域が、電子放出の源になっていることを確認することができた。さらに、AFMのエネルギー散逸のチャンネルによって、そのグラファイトの領域において、エネルギー散逸が小さくなることを観測した。この測定の際、探針と試料は比較的離れており、このエネルギー散逸は、ジュール熱による損失であるといえる。したがって、グラファイト領域において、他のナノ粒子の箇所に比べて電気抵抗が低いことが実験的に明らかとなった。この知見はこれまで得ることができなかった重要な知見であり、ナノダイヤモンドの粒子よりもむしろ、その間の領域である粒界が、電子放出だけではなく、電流の供給場所としても働いていることが明らかになった。
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