この研究の目的は(1)東北地方におけるこけし生産の全体的な経済的動向の指標として、(こけしを含む)民芸品の収集と製作におけるコレクターと工芸作家の世代間の変化を比較すること、そして(2)東日本大震災後、こけし工人(=こけし作家)による新たな形態のこけし(およびこけし関連商品)がどのような事態をもたらしているのか、参与観察によって明らかにすることであった。 2011年の3月以来、被災地に少しでもお金を落とそうとする流れも手伝い、こけし製作と売上は拡大した。しかし幾人かのこけし工人は、新形態のこけしやこけし関連商品を、あくまで現代と将来の地域掲載のためと位置づけ、チャリディではないと述べている。これら製作物のインパクトや購買者の反応、そして実際の経済的な動向を検証した。さらにこの研究を完遂するために、現代の著名なこけし工人と協同した新形態のこけしの製作者と接触し、インタビューと会合を実施した。石巻市に居住する新形態のこけしの製作に取り組む方へのインタビューを実施したが、この接触によって、彼がこれから展開する山形、宮城、福島のこけし工人との協同の機会立ち会うことが可能となり、その詳細について調査することが可能となった。 この調査研究の成果は(こけしをはじめとする)郷土産品を地元の人びとの物質的なニーズの一部として、そして震災後の経済復調に一定の役割を果たすものとして、より深い文化的な理解を促したことである。こけし製作における長期的な変化という研究関心は、こけしが製作者であるこけし工人と、コレクターや観光客などの購買者、そして中間取引業者が展開する東北のミクロ経済に、どのような意味とインパクトをもたらし、長期的にはどのような振幅に位置しているのかを明らかにすることが可能となった。
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