養殖魚の育成にはおびただしい種類と量の抗菌物質が恒常的に使用されており、耐性菌出現の見地から問題となっている。一方、養殖魚では代表的症状として肝肥大などの肝障害が認められており、投与薬物との関連が疑われているが、その原因はほとんど不明である。本研究では、代表的実験魚であるゼブラフイツシュにおいて肝毒性モデルを確立し、漢方薬であるオウギ(黄著)に含まれる多糖(Astragalus polysaccharid:A PS)APSの作用およびその機序を検討する。
A. デキサメタゾンによる肝肥大とAPSの作用:デキサメサゾン(DEX)はゼブラフィッシュ稚魚(7dpf)の肝臓の大きさの増加(肝肥大)中性脂肪の増加(脂肪肝)を引き起こした。DEXによるこれらの影響はグルココルチコイド受容体阻害薬やノックダウンで抑制された。デキサメサゾンは肝臓のAngptl4発現を増加させ、CYP3A発現を低下させた。 B. 成魚を用いたAPSの肝毒性防御作用の検討:成魚にオウギ粉給餌を行ったが、どの程度摂取しているかを確認できなかった。また、四塩化炭素による肝臓抗酸化酵素発現の変化に対してAPS投与は有意な影響を与えなかった。 C. 培養スライス肝を用いたAPSの肝毒性防御作用の検討:コイ肝スライスの培養標本では四塩化炭素による細胞バイアビリティ低下や逸脱酵素漏出に対してAPSは抑制作用を示したが、ゼブラフィッシュでは肝膵臓であるためかスライス標本の培養自体ができなかった。
以上の成績は密飼い等によるストレスが肝障害の原因である可能性を示唆する。APSの効果については確認できなかったが、投与法をまず検討すべきであると考えられた。
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