研究課題/領域番号 |
14F03907
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
村岡 裕由 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 教授 (20397318)
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研究分担者 |
NOH Nam Jin 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 野外温暖化実験 / 炭素循環 / 微生物呼吸 / 根呼吸 / 気候変動 / 落葉広葉樹林 / 温度応答性 / 温度馴化 |
研究実績の概要 |
温暖化が土壌の炭素動態と土壌呼吸によるCO2放出(微生物呼吸と植物根呼吸,総量としての土壌呼吸)にもたらす影響を実験的に検証し,将来変動予測をするための地下部炭素循環モデルの開発のために,高山試験地(TKY)と苫小牧研究林(TOEF)の落葉広葉樹林の地表下に電熱線を埋設し,3~5℃の加温処理を施して,呼吸速度の季節変化と温度反応特性と土壌炭素と窒素の貯蔵量の変動を調査した。 地温の上昇は呼吸速度の増加を招いたが,一方で,これらの呼吸速度の温度反応曲線は傾きが緩くなり,温度馴化が土壌内で生じたことが示された。呼吸速度の温度応答性を示すQ10値はTKYとTOEFサイトで異なり,TKYの方が呼吸活性が高いことが示唆された。以上の結果は,森林タイプが同一とされる2サイトであっても土壌呼吸特性が異なることや,温暖化により呼吸速度の温度反応性が変化するため,将来の温暖化が土壌からの炭素放出にもたらす影響のモデル予測を慎重に検討すべきであることを示す。一方で,温暖化は、土壌有機炭素と窒素の貯蔵量を有意に変化させなかったことは、長期的な温暖化効果のモニタリングの必要性を示唆している。温度反応性の時間変化の解析は年間土壌呼吸量の推定モデルの精度を大幅に向上させることがあることを示唆した。 地域気象モデルWRFを用いて,TKYサイトを対象として,現在気候での地温と将来気候(2080年頃)の地温データと温暖化実験で得られた土壌呼吸曲線とあわせて土壌呼吸速度の変動予測を行った。気象モデルによる地温の再現性は高いことを確認した上で,①現在の地温予測値と土壌呼吸曲線,②将来の地温予測値と土壌呼吸曲線の2タイプについて年間の土壌呼吸速度を推定したところ,TKYサイトでは春と秋の地温上昇が土壌呼吸速度の顕著な増加をもたらすが,夏はその傾向は顕著ではないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に基づいて、定期的な野外調査の実施に温暖化が地下部炭素と窒素循環に及ぼす影響を定量的に解明・評価することができている。研究成果の一部はドイツで開催された国際シンポジウムで発表した。また、微生物・根・土壌呼吸速度の温度応答性に関する結果を解釈した論文は国際誌に投稿して審査を受けているほかに、他の論文も執筆中である。また、将来の気温と土壌呼吸速度モデルを用いた予備分析は、次年度の生態系モデル研究と地上部地下部炭素循環の総合的な分析のための基礎を築いた。以上の理由から本研究課題は順調に進展していると判断した
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今後の研究の推進方策 |
温暖化効果の年間変化の分析のために、1年目と同じように、2年度目も野外調査(温暖化区・対照区における呼吸速度の測定)と室内実験(土壌炭素・窒素含量の分析,土壌微生物含量の推定など)を実施して、土壌呼吸予測モデルの改善に重点を置く。これらの継続・追加調査や実験は、総合的な観測体制が整っている高山サイト(TKY)において重点的に行う。
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