平成26年度は、情報の収集・整理や論稿の執筆に必要なOA機器のほか、民事執行法及びその周辺法分野に関する基本図書などを購入し、日本の民事執行法(とりわけ強制執行に関する部分)について、基本概念を中心に、その基礎的な理解を深めるための作業を行った。その際には、民事執行法の立案担当者の解説、体系書・教科書、注釈書を参照した。その中で、特に力点を置いたのは、債務名義制度や執行文制度などの日本の強制執行手続の根幹をなす諸制度の沿革と現状である。これらの制度がフランス法やドイツ法の影響の下、明治期に日本に導入されたこと、しかし、昭和54年に制定された民事執行法と同法のその後の数次にわたる改正において、日本独自の進化を遂げたことなどを明らかにすることができた。また、担保権実行制度が強制執行制度は別個の物とされている日本法の特質を、民法の担保物権法との関連で考察することも行った。奨学金の延長が認められたため、次年度は、本年度に得られた知見を基礎にして、日本の民事執行法に相当する単行法を有しておらず、執行法が体系性を持たないまま放置されている中国において、どのような執行法制を構築していくのが望ましいかを考察し、その成果を中国で発表にすることによって中国の民事執行制度の整備に貢献したいと考えている。 なお、外国人特別研究員は、日本民事訴訟法学会(福岡にて開催)や世界訴訟法学会(韓国ソウルにて開催)にも参加して、日本や諸外国の研究者との意見交換などを通じて、国際的な視野を広げてきた。このことも、研究計画の実施に大きな意味を有している。
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