研究課題/領域番号 |
14F04021
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
熊谷 隆 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (90234509)
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研究分担者 |
WANG JIAN 京都大学, 数理解析研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2018-03-31
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キーワード | 飛躍型確率過程 / 非局所作用素 / ポテンシャル論 |
研究実績の概要 |
平成28年9月に、Wang氏が妻の出産に伴う滞在中断から復帰した。以前同様に京都大学数理解析研究所において定期的にインフォーマルなセミナーを行い、以下の進展が得られた。 1)一般の測度付き距離空間上のstable-like processの熱核評価、ハルナック不等式の安定性について、これまでの当該研究の結果を含む大きな枠組みでの安定性理論を構築することに成功した。この理論は、安定性の指数であるパラメータが2以上の場合にも適用できる一般論であるとともに、体積増大度の仮定を、先行研究でなされていたAhlfors regularの仮定からvolume doublingに弱めることに成功している。Volume doublingの仮定は、局所作用素における解析幾何学で自然な仮定であり、非局所作用素の理論もこの範疇で扱われることが望まれていたので、この拡張は非常に意味があると考える。当該研究は、Wang氏が外国人特別研究員としての滞在を中断していた間も、電子メールや相互訪問等により継続されてきた。合わせておよそ2年半の期間を経て、Wang氏とZ.Q. Chen氏との共著でこれらの結果を熱核の安定性、放物型ハルナック不等式の安定性、楕円型ハルナック不等式の安定性の3本の論文にまとめ、ArXivに公開するとともに雑誌に投稿中である。 2)昨年11月にStanford大学のDembo氏を招聘した際に、飛躍型確率過程のthick pointの大偏差原理に関する共同研究を開始した。当該研究はDembo-Peres-Rosen-Zeitouniによる一連の先行研究があるが、彼らの研究はブラウン運動や安定過程といった特別な確率過程に限られており、本研究ではさらに一般の飛躍型確率過程で同様の結果を目指している。現在、いくつかの技術的問題点をクリアするための議論を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上述したstable-like processの熱核評価、ハルナック不等式の安定性理論は、非局所作用素におけるde Giorgi-Nash-Moser理論に相当する理論と言えるものであり、Wang氏、Z.Q. Chen氏とまとめた三部作は私のこれまでの研究の中でも大きな位置付けを持つ論文である。(なお、当該研究は熊谷の基盤研究Aによる研究とも重なりがあることを注意しておく。)今後の関連分野の研究の基礎文献となりうる成果であり、当初の計画でここまでたどり着けるとは想像していなかった。
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今後の研究の推進方策 |
上述したDembo氏との研究を推進することに加え、遠距離相関を持つランダム媒質における非局所作用素の研究などを計画している。Wang氏との定期的なインフォーマルセミナーはお互いにとって大変刺激的であり、今後もこの方法で最終年度にさらなる研究成果を挙げることを目指す。
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