研究課題
鉄カルコゲナイド超伝導体Fe(Te1-xSex)およびFeSeの良質単結晶を作製し、臨界電流(Jc)特性を含む基礎物性の評価を行った。特にFe(Te1-xSex)においては広い組成域にわたり、様々な雰囲気下でアニールすることによる超伝導特性の悪化をもたらす過剰鉄の除去法を確立した。その結果、最大の臨界温度は14.5 K程度と従来の報告を再現したのみであったが、0.5>x>0.05の広い領域にわたりバルクの超伝導が発現することを見出した。加えて、高温での反強磁性転移を含む新しい相図を提案した。また、全ての試料において2 Kで実用の基準を超える2x10^5 A/cm2以上のJcを実現した。さらに、ホール係数が多バンドの存在を反映した大きな温度依存性を示すと共に、組成と共に系統的に変化することも見出した。一方、FeSeにおいては、気相成長法による良質の単結晶成長に成功し、Seの一部をSに置換した単結晶も作製した。FeSe単結晶においては、低温における抵抗率が20 μΩcm以下の良質のものを作製した。これらの試料においてJcの温度依存性・磁場依存性を詳細に測定し、不可逆磁化の時間依存性の測定から磁束量子のダイナミクスに関する初めての包括的な評価を行った。その結果、FeSeはFe(Te1-xSex)と比較し、磁束のピン止めの非常に弱いバルク超伝導体であることを確認した。さらに、プロトンを照射することによりJcが2倍以上増大することを初めて明らかにした。プロトン照射により生成された欠陥は準粒子の散乱体として働くが、低照射量では臨界温度が急速に抑制されるものの、ある程度以上ではその変化がほとんどなくなることを見出した。また、87 K程度で起こる構造転移温度以下では、移動度の非常に大きなキャリアが生成され、その一部がディラック電子的な分散関係を持つとの結果も得た。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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