研究実績の概要 |
本年度は、前年度から引き続いて磁場擾乱の自発的励起過程(衝突過程・離散粒子効果)と太陽風のグローバルな非一様性の効果が温度異方性―ベータ比や不安定性へ与える影響の解明に取り組んだ。本研究では、初期状態(太陽近傍)ではプロトンサイクロトロン不安定な状況から計算を始めた。これは、太陽近傍においてサイクロトロン波が励起されていることを想定してのものである。一様プラズマ中では温度異方性が不安定性条件を満たさなくなった段階で系は安定化するが、非一様性がある場合は、太陽風の膨張の効果によって温度異方性が変化し続け、温度が等方に近づく辺りで励起されたイオンサイクロトロン波が減衰してしまうことが分かった。これは先行研究で導出されたモデル[Yoon+Seough, J. Geophys. Res., 2014]でも見られた傾向だが、波のWKB的な発展も正しく取り入れた本モデルでも同様の振る舞いを確認することが出来た。一方で、先行研究[Yoon+Seough, J. Geophys. Res., 2014]で示されていた値よりも、励起された波の強度は一桁ほど小さくなることが分かった。また、衝突項の効果を含めた場合、パラメータ平面上の軌跡が高ベータ側へシフトし、斜め伝搬ファイアホース不安定性が生じる可能性が示唆された。また、昨年度得られていたアルファ粒子による平行方向・斜め方向のファイアホース不安定性の解析結果をPhys. Plasmas誌上にて発表した。
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