研究課題
本研究では、固液界面における有機分子の自己集合を利用してグラフェンの高秩序化学修飾を行うことを目的としている。グラフェンは、その優れた物理的な性質から、様々な用途が期待されている新材料である。しかし、グラフェンそのものには分子識別能がないことやゼロギャップ半導体であることから、上記の用途に供するには適切な化学修飾をグラフェンに施す必要がある。我々は有機溶媒とグラフェンの界面においてデヒドロベンゾ[12]アヌレン(DBA)誘導体のような有機分子が二次元自己集合体を形成することを走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて調査している。本研究では、この有機溶媒とグラフェンとの界面におけるDBA誘導体の自己集合の制御を鍵として、反応活性な官能基を組み込んだDBA誘導体のグラフェン表面における配列を利用した高精度修飾、および優れた分子認識能を持つ二次元多孔性ネットワークのグラフェン表面での構築とその分子認識能の調査を行うことを目的としている。26年度は高純度のグラフェン調製法の確立と、反応性に関する予備実験、および反応率やその二次元分布に関する分析ならびに定量法を確立することを目的として、構造的に単純な有機アジドおよび芳香族ジアゾニウム塩から発生させたナイトレンの付加反応について検討した。その結果、剥離法による高純度グラフェン調整技術を獲得すると共に、ラマンマッピングを用いた反応の二次元分布の分析法を確立することができた。
2: おおむね順調に進展している
反応性部位をもつデヒドロベンゾ[12]アヌレンの自己集合単分子膜を用いた周期的化学修飾を行うための予備実験として、構造的に単純な有機アジドおよび芳香族ジアゾニウム塩から発生させたナイトレンの付加反応について検討した。その結果、剥離法による高純度グラフェン調整技術を獲得すると共に、ラマンマッピングを用いた反応の二次元分布の分析法を確立することができた。反応結果のさらなる精査が必要ではあるが、目的の達成に向けた準備がある程度整ったといえる。
高純度のグラフェン調製法の確立と、反応性に関する予備実験、および反応率やその二次元分布に関する分析ならびに定量法がほぼ確立されたので、今後は反応性部位をもつデヒドロベンゾ[12]アヌレンの自己集合単分子膜を用いた周期的化学修飾に着手する。そのため、単分子膜を形成する分子の合成、単分子膜形成のSTMを用いた観測、反応性部位の反応とそれにより得られる修飾グラフェンの修飾周期性に関して、STM観測およびラマンマッピングを用いて検討する。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
ACS Nano
巻: 9 ページ: 0000-0000