研究課題
最初の目的の錯体[FeIII(H-5-Br-thsa-Me)(5-Br-thsa-Me)]H2Oの温度変化の単結晶X線構造解析、X線散漫散乱、温度変化の磁化率測定、可視―紫外分光測定、などを行った。この錯体は単核錯体であるが、水素結合により6量体を結晶中で形成していた。温度変化の磁化率測定の結果、3ステップのヒステリシスをもつスピンクロスオーバー挙動を示すことが明らかになった。その電子状態(スピン状態)について詳細に検討した結果、高温から温度を低下するに連れて、【6個全部の鉄(3価)分子が高スピン⇔4個が高スピン+2個が低スピン⇔2個が高スピン+4個が低スピン⇔6個全部の分子が低スピン】、のように3ステップでスピンクロスオーバー現象を示すことが分かった。これは単核錯体としては世界で初めての結果である。このことを確証するには鉄のメスバウアースペクトル測定が最有力であるが、Br原子を配位子に含んでいるために普通のメスバウアースペクトルの測定は不可能であると言われていた。ところが、この論文(Angew. Chem. Intl. Ed.)を見たポルトガルの放射科学研究所のProfessor Manuel Almeidaから、100mgの試料があれば、特殊な方法で鉄(3価)のメスバウアースペクトルの測定が可能であるとのメールを頂いたので、すでに試料を送って測定結果待ちの状態である。また、鉄(3価)イオンをシアノ基とフォトクロミック分子であるジチアルエテン分子で架橋した4核錯体においても大変興味深いスピンクロスオーバー現象を観測しており、現在、論文に投稿中(Angew.Chem.Intl.Ed.)である。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Angew. Chem. Int. Ed.,
巻: 55 ページ: 5184-5189
10.1002/anie.201511281R1(2016)