本研究では、微小流体デバイスに組み込み可能な半導体化学センサとして期待される light-addressable potentiometric sensor (LAPS)の空間分解能を向上させる新しい原理の実証と装置の開発を行った。LAPSは、画素構造や配線を形成することなく、光照射位置ごとにpHやイオン濃度の読み出しが行える光アドレス機能を有しており、1枚のセンサチップ上で複数の検体やイオンを測定したり、空間分布を画像化することができる。 LAPSは、半導体センサ裏面の光照射で発生した電子・正孔対が、センサ表面のイオン濃度に応答して形成される空乏層で電荷分離される際に生じる電流を信号として検出する。このとき、面内方向への電荷の拡散によって空間分解能が決まる。本研究では、光をパルス状に照射し、過渡電流を時間分解的に測定することによって、照射点近傍のイオン濃度を高い空間分解能で測定する方法を開発した。前年度までの研究でこの原理の実証が行えたので、最終年度はさまざまなパラメータを変化させて測定条件の最適化を行った。 実験により、パルス照射後の電流信号の積分時間に対する空間分解能の依存性を得ることができた。例として、積分時間2μsおよび10μsにおける空間分解能はそれぞれ110ミクロンおよび240ミクロンであった。積分時間を2μsより短くすることによって空間分解能をさらに向上できることが示されたが、S/N比との間にトレードオフ関係が認められた。実際にこの方法を用いて微細テストパターンのイメージングを行い、高解像度の化学イメージが得られることを確認した。また、pH感度については、従来法と本質的に同じ値を得ることができた。
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