研究課題/領域番号 |
14F04068
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
安東 宏徳 新潟大学, 自然科学系, 教授 (60221743)
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研究分担者 |
SHAHJAHAN MD. 新潟大学, 自然科学系, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | キスペプチン / GnRH / メラトニン / 温度感受性TRPチャンネル / 脳・神経 / 月周リズム / 生殖リズム / 神経ホルモン |
研究実績の概要 |
本研究では、半月周性の産卵リズムをもつクサフグを研究モデルとして、月周産卵リズムの形成におけるKiss-GnRH系の機能とその分子機構を明らかにする。これまでの研究から、GnRH2、Kiss、Kiss受容体の遺伝子発現が同期して日周および概日変動し、これらの生殖調節神経ホルモンの発現が松果体にある概日時計と松果体から分泌されるメラトニンによって調節される可能性が示された。本研究では、KissニューロンとGnRHニューロンの機能形態学的相互関係を明らかにし、それを基盤として、メラトニンや弱光、さらに水温によるKiss-GnRH系の機能の調節機構を明らかにする。平成27年度では、次の1)と2)の解析を行った。 1)クサフグに明期、あるいは暗期の始めにメラトニンを投与(6時間)して、Kiss-GnRH系の各遺伝子の発現量の変化を調べた。Kiss、Kiss受容体、GnRH1、GnRH2の遺伝子発現量はメラトニンによって増加し、その効果は暗期の始めの投与が大きかった。また、メラトニン受容体1bの遺伝子発現量もメラトニン投与によって増加した。暗期に分泌量が高まるメラトニンは、脳内の受容体を介して、Kiss、Kiss受容体、GnRH1と2の遺伝子発現を刺激し、これらの神経ホルモンの発現を日周期的に調節すると考えられる。 2)クサフグを異なる水温で7日間飼育し、Kiss-GnRH系の各遺伝子とTRPV1a遺伝子の発現量の変化を調べた。低温および高温でKiss、Kiss受容体とGnRH1の遺伝子発現量が低下し、生殖腺指数も低下したが、TRPV1a遺伝子は高温で増加した。間脳で発現しているTRPV1aが直接的に高温を感知することが示唆された。そこで、低温で活性化することが知られているTRPA1遺伝子をクローニングし、温度による影響を調べた結果、TRPA1遺伝子は低温で増加することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に計画していた研究のうち、クサフグKiss前駆体に対する抗体を用いたKissニューロンとGnRHニューロンの形態的相互関係の解析は遅れており、H28年度に重点的に取り組む予定であるが、メラトニンおよび水温によるKiss-GnRH系の機能の調節については、順調に進行し、期待された以上の結果が得られた。メラトニンによるKiss-GnRH系の調節が明らかになったとともに、温度による調節機構について、TRPV1aの成果に基づいてTRPA1の解析を新たに開始した結果、脳内での温度の直接的感受とKiss-GnRH系の調節という新しいメカニズムが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の5月~8月のクサフグの産卵期に、野外の産卵場で成熟魚を採集し、抗クサフグKiss前駆体抗体と抗GnRH抗体を用いた多重染色法によってKissニューロンとGnRHニューロンの機能形態的相互作用を明らかにする。また、H27年度に明らかになった、TRPV1aとTRPA1を介した温度による制御の分子形態学的基盤として、両チャンネルの発現細胞を同定して、KissニューロンおよびGnRHニューロンとの機能形態学的相互関係を明らかにする。H27年度の解析において、メラトニンによるKiss-GnRH系の調節が明らかになった。そこで、半月周性の産卵リズムに重要と考えられる月光によるKiss-GnRH系の機能の調節を検討するため、弱光暴露実験を行い、メラトニン分泌量とKiss-GnRH系の各遺伝子の発現量に対する影響を明らかにする。
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