研究課題/領域番号 |
14F04074
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
渡邊 裕純 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80323757)
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研究分担者 |
MALHAT Farag 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 畑土壌 / 降雨流出 / 農薬 / 土壌残留 / 人工降雨装置 / 農薬動態予測モデル / 環境影響評価 |
研究実績の概要 |
本研究の主目的は、農地特に畑土壌からの農薬の降雨流出とそれに伴う土壌残留の評価システムを構築し、畑土壌での農薬動態の予測・評価のためのツールおよび手法を開発することである。 本年度の研究は,まず1. 農薬の降雨流出の評価のための人工降雨装置の開発および降雨流出試験設計をおこなった。移動式小型人工降雨装置に流出水採水器を備えた室内試験用土壌コンテナとの流出水採水器を備えた圃場流出試験用型枠を構築し、東京農工大学付属農場土壌を用いて降雨流出試験を降雨が30㎜/hrおよび50㎜/hr,地面の傾斜が3%,5%,10%,を組み合わせて行い,流出特性を解析した。 次に2. 農薬の畑地からの流亡と農薬消長モニタリングでは,東京農工大学付属農場での圃場スケールの散水式降雨流出装置による農薬の降雨流出試験および農薬残留モニタリングを行った。流出水中および流出土壌中の最高農薬濃度は約496ug/Lおよび約707ug/kgで,降雨後の表層土壌中1㎝の残留農薬濃度は最高で0.915mg/Kgあった。 また3. 農薬の土壌中での残留評価のための室内・野外試験においては,今年度上記試験で使用した除草剤および殺菌剤を対象に農薬の畑土壌中での分解プロセスのパラメータを定量する室内実験を行った。このうち殺菌剤の土壌中半減期は63日から87程度で温度依存性があることが確認された。 最後に4. 土壌残留予測モデルの開発・改良に関して,土壌残留の評価システムの主要ツールとして土壌残留予測モデル(SPECモデル)を開発中である。今回,畑土壌の水分動態および農薬分解の温度依存性に関してモデルプログラムの改良を行った。SPECモデルの評価は,前年度行われた未発表データおよび今年度行った上記の圃場試験および室内実験の結果を用いた。今年度の研究成果のうち項目2.,3.,4.は日本農薬学会第40回大会にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究がおおむね順調に進展している理由としては,降雨装置の開発はほぼ完了し,降雨試験の設定に関しても,降雨および土壌の流出特性を解析を経て,標準シナリオ50㎜/hr降雨,5%傾斜を標準シナリオと設定した。標準シナリオにおける除草剤を用いた圃場スケール降雨流出試験において,流出水量および流出土壌量の解析,資料中の農薬濃度の分析,検出状況及び農薬流出特性を確認することができた。これらのデータを基に現在,移動式小型人工降雨装置および圃場スケールの散水式降雨流出装置によるネオニコチノイド系供試農薬を用いた降雨流出試験および農薬残留モニタリングの試験準備に取り掛かっている。 また,室内試験においても,除草剤,殺菌剤のプロトコルを踏襲し,ネオニコチノイド系供試農薬を用いた土壌分解試験が継続中である。土壌残留の評価システムの主要ツールとして土壌残留予測モデル(SPECモデル)に関しては,土壌水分動態と土壌中の農薬動態を予測するモデルの初版Ver.1.0を完成させた。 今年度の成果の一部を国際誌の査読付き論文に2報,日本農薬学会第40回大会にて4報報告した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の主目的は、農地特に畑土壌からの農薬の降雨流出とそれに伴う土壌残留の評価システムを構築し、畑土壌での農薬動態の予測・評価のためのツールおよび手法を開発することである。本研究で構築する畑土壌における農薬動態評価システムは、移動式小型降雨流出試験装置、圃場スケール降雨流出試験装置、農薬動態予測モデルからなり、室内実験および圃場試験データの解析を通して、開発された農薬動態予測モデルを検証し、農薬残留評価および水系への流亡による環境影響評価の手法を開発する。供試農薬は殺虫剤のイミダクロプリド,クロチアニジン,ジノテフラン,フィプロニル として、今年度,具体的には以下の3項目の実験・解析および環境影響評価を行う。 1. 圃場試験による農薬の畑地からの降雨流出と農薬動態モニタリング:移動式小型降雨流出試験装置および圃場スケール降雨流出試験装置を用いた室内試験および圃場試験と残留農薬モニタリングを行う。 2. 農薬の土壌中での挙動および土壌残留評価のための室内・野外試験:供試農薬において土壌中分解試験,土壌吸着試験,土壌カラム浸透試験を行い,農薬の土壌中動態予測モデルに使用するパラメータを定量する。 3. 農薬動態評価モデルの構築・検証および環境影響リスク評価 :開発中の土壌残留予測モデル(SPECモデル)に降雨流出予測サブモデルを構築し,降雨流出試験・農薬動態モニタリングの結果を用いて検証・評価を行う。さらに供試農薬の環境影響リスク評価を行う。
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