研究実績の概要 |
174のセイヨウナタネ系統を用い、高窒素と低窒素条件で栽培し、本葉5枚程度の幼苗期に、葉の大きさ、地上部の乾物重やSPAD値(葉の緑色程度)の調査を行った。低窒素条件では植物体乾物重や葉の大きさが低下したが、セイヨウナタネの一部の系統はあまり低下せず、高NUE(窒素利用効率)系統の候補と考えられた。また、SPAD値の差異があった90系統を選び、窒素濃度、炭素濃度の測定を行った。C/N比は窒素利用効率に関する重要な形質であり、90系統において、低窒素下のC/N比は高窒素下より1.03~2.29倍に高くなることが示された。以上の調査により得られた形質データと先行研究で整備された19,945のSNPデータと組み合わせ、GWASを行った。低窒素下でのSPAD値、高窒素下でのC/N比、高窒素下と低窒素下での窒素濃度等の特性のGWASピークがA10の13~15 Mbの領域に集中しており、この領域はNUEの改良に重要であると考えられた。この領域の遺伝子の機能アノテーションを行い、窒素同化の主要な経路に関わる重要な遺伝子例えばグルタミンシンテターゼ遺伝子GS1、グルタミン酸シンターゼ遺伝子GOGAT、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子GDHを同定した。外国人特別研究員が8月1日に国立研究法人農業生物資源研究所に任期付研究員として就職したため、平成27年度は4ヶ月で研究を中断せざるを得なかった。半分以上のサンプル(1,800)の窒素含量を測定し、アソーシエーション解析を行い、候補遺伝子を推定したが、遺伝子の発現解析や遺伝子型分析は出来なかった。
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