研究課題
鉄過剰は、アジアの稲作において深刻な問題の一つである。鉄過剰症が発生した圃場では、15%から80%もの収量の低下を引き起こすこともある。その結果、世界中で毎年2800万トンのイネ収量の低下要因となっている。本研究の目的はイネの鉄過剰に対する分子メカニズムを解明し、その成果を基盤にして鉄過剰に強いイネを作出・選抜することである。今年度は、鉄過剰条件下で育てたイネの遺伝子発現応答について、昨年度に引き続いて再度マイクロアレイ解析を行い、その再現性を確認した。さらに、鉄栄養の恒常性に関わる重要な遺伝子について個別に Real Time RT-PCR を行い、マイクロアレイ結果の信頼性を評価した。鉄過剰条件で特徴的な発現パターンを示す遺伝子について、T-DNA 挿入変異株(POSTEC line)を入手し、温室内にて通常条件で栽培した。表現型を確認し、次世代の種子を得た。2016年6月にISINIP(国際植物鉄栄養学会)に参加し、これまでの成果を発表した。また、本研究員の出身地のミャンマーでもイネの鉄過剰症は問題となっている。そこで、ミャンマーで現在栽培されている主要なイネ品種の種子を入手して試験を行った。ミャンマーのイネ15品種と、比較対象として日本のイネ品種(月の光)を用い、通常条件と70倍の鉄過剰条件下で栽培した。草丈、根長、葉の鉄過剰症状、金属含有量を測定した。それぞれの品種で、鉄過剰における生育が異なり、鉄過剰条件でも生育に深刻な悪影響がなく鉄過剰に耐性のある品種がある一方で、顕著な鉄過剰症状が見られ鉄過剰に感受性のある品種も見られた。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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PLoS ONE
巻: 12(3) ページ: e0173441
org/10.1371/journal.pone.0173441