研究課題/領域番号 |
14F04085
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
谷野 章 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (70292670)
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研究分担者 |
COSSU MARCO 島根大学, 生物資源科学部, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 太陽電池 / 太陽光発電 / 温室 / 再生可能エネルギー |
研究実績の概要 |
作物への遮光の影響を最小に留めつつ、太陽光発電の機能を有する、半透過型の太陽電池温室屋根材を開発し、その太陽電池屋根材の電力生産、遮光特性、および経済性を明らかにすることを全期間での大きな目的としている。 日本やイタリアでは、豊富な日射が得られるので、温室は夏期には高温回避の目的である程度遮光される習慣がある。このため、もし半透過型の太陽電池屋根材で適度な遮光を実現できるのであれば、その太陽電池で生産された電気エネルギーで温室環境制御機器を運転することで、より良い作物生産につながる。あるいは、売電収入を得ることも可能である。太陽電池による遮光は夏期の冷房負荷の低減にもつながる。太陽電池を屋根材として配置する位置と割合を変えることで、温室内の日射量と太陽電池の発電量を調節可能とする。 開始年度の実験は、研究分担者が9月半ばに来日後、秋~冬期に実施されたため、平成27年度は春~夏期まで連続して実験を継続し、発電および遮光についての周年データを得た。前年度に生じた問題点を改善しながら実験を継続した。使用した太陽電池モジュールは半透過性があり、両面で発電可能であった。夏から秋に、太陽電池の下で栽培する作物の成長について、研究分担者の出身大学であるサッサリ大学と連携してイタリアで調査を進めた。 平成27前年度前半までに得られた成果を国際学会で2件、国内学会で2件発表した。さらに、データを蓄積して考察を深化させ、エネルギー応用に関する学術誌で公表した。引き続き、温室屋根面に配置した太陽電池モジュールを活用する場合の発電量と遮光率を日本およびイタリアの地理条件で計算している。この途中経過を平成28年の関連国際学会で発表するために要旨を提出し受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度は、研究分担者が9月中旬に来日後、秋冬期に実験を実施したため、今年度は春~夏期まで連続して実験を継続し、ガラス温室屋根材用の半透過太陽電池モジュールの発電および遮光特性の周年データを得た。前年度に生じた実験上の問題点を一つ一つ解決しながら実験を継続した。使用した太陽電池モジュールは、申請者らが開発した微小太陽電池セルを疎らにガラス板内に埋め込んだ特殊なモジュールであり、半透過性があるため、両面で発電可能であった。従来型の不透過太陽電池モジュールと発電ならびに遮光の比較を行った。 太陽電池の下で栽培する作物の成長について、夏秋に研究分担者の出身大学であるサッサリ大学と連携してイタリアで調査を進めた。 平成27前年度前半までに得られた成果を国際学会で2件、国内学会で2件発表した。さらに、データを蓄積して考察を深化させ、エネルギー応用に関する学術誌Applied Energyで公表した。 引き続き、温室屋根面に配置した太陽電池モジュールを活用する場合の発電量と遮光率を日本およびイタリアの地理条件で計算している。まずは、最もシンプルなモジュール1枚の場合の極座標表示と観測点から見た太陽の重なりを判別するアルゴリズムの思案から始めた。この途中経過を平成28年の関連国際学会で発表するために要旨を提出し受理された。 以上の経過および成果から、研究は当初の予定通り順調に進行しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度までの研究が順調に進んだため、発電量と遮光量のデータ解析を推進し、国際会議8th International Symposium on Light in Horticultureで発表する予定である。 イタリアで実際に作物栽培が行われている温室の根面に配置した太陽電池モジュールの発電量、遮光率、および太陽電池下の作物応答を解析する。その温室は、2連のA型東西棟(50.0 m x 19.2 m)であり、南屋根面に多結晶太陽電池が隙間無く配置されている。北屋根面には太陽電池は設置されていない。すなわち、屋根面の50%が太陽電池で覆われた温室である。地表、地上高0.5 m、1.0 m、1.5 mと高さを変化させて、通年にわたって温室内の日射分布を計算する。基本的アルゴリズムは研究代表者がすでに開発しており、研究分担者が当該温室の形状に適応するプログラムをMathematicaで作成し計算する。これにより、太陽電池パネル下での作物の栽培が可能な時期と空間が温室内で3次元的に推定される。当該温室で実測された日射の値と比較することにより、計算の精度を評価する。以上の成果をとりまとめて論文発表することを目指す。 イタリアでは代表的な弱光栽培作物であるアスパラガスの太陽電池設置温室内での応答をサッサリ大学の研究者の協力の下に継続する。作物への遮光の影響を最小に留めつつ、最大の太陽光発電効果が得られるような太陽電池屋根材の電力生産、遮光特性、および経済性を研究する。
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