日本やイタリアの温室は夏期には高温回避の目的である程度遮光される。このため、半透過型の太陽電池屋根材で適度な遮光を実現できれば、その太陽電池で生産された電気エネルギーで温室環境制御機器を運転することで、作物の量および質の向上につながる。作物と電力の生産を両立させるためには、屋根に設置する太陽電池の最適な配置を明らかにする必要があった。 28年度も引き続き、温室屋根面に設置した太陽電池の発電量と遮光率のデータ解析を推進し、経過を国際会議で発表した。継続して、イタリアで実際に作物栽培が行われている2連のA型東西棟温室の南屋根面に配置した太陽電池モジュールの発電量、遮光率、および太陽電池下の作物応答を解析した。地表、地上高0.5 m、1.0 m、1.5 mと高さを変化させて、通年にわたって温室内の日射分布を計算した。この結果、太陽電池パネル下での作物の栽培が可能な時期と空間を温室内で3次元的に推定できた。当該温室で実測された日射の値と比較して、計算の精度を評価した。以上の成果をとりまとめて論文発表した。イタリアでは代表的な弱光栽培作物であるアスパラガスの太陽電池設置温室内での応答をサッサリ大学の研究者の協力の下に検討した。 半透過太陽電池を用いれば、温室の適度な遮光と発電を同時に実現できるが、遮光率は一定なので、曇天時に温室内の日射が必要以上に低下してしまう。この弱点を克服するために、ある日射閾値以下では、太陽電池をブラインドのように回転させて温室への日射の取り込みを優先させるようなプロトタイプシステムの構想に着手した。このプロトタイプ開発の経過と性能を取り纏め、農業工学に関する専門誌に投稿した。
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