ブタではヒトの臓器移植を目指した研究が多く、現在では畜産分野への貢献を目指した体細胞核移植研究は少ない。そのため、ウシやマウスとは異なり、核移植のドナーとして用いる細胞の種類と核移植卵の発生能とを結びつける系統立てた情報は少ない。そこで、本研究では、ブタで様々な組織から細胞を採取し適切な培養法を検討し、それらを用いて核移植を行い、発生能を検討する。これらの知見を得て、最終目的としてブタ体細胞核移植実験系の改善を目指す。H27年度に、海外特別研究員は、本人にとって全く新しい技術である、哺乳動物卵子・初期胚の取り扱い、体外成熟培養、単為発生、核移植、リアルタイムPCRによる遺伝子発現の検討などを順調に習得したので、H27年度はブタ体細胞核移植の体外発生能向上を目指した研究を実施した。すなわち、体細胞核移植卵の活性化方法の検討、ドナー細胞核の除核レシピエント卵への導入方法の検討、ドナー細胞種の影響;特に幹細胞の有用性の検討、培養方法を検討した。その結果、活性化方法、ドナー核の導入方法では、検討したいずれの方法でも、胚盤胞への発生率、胚盤胞の細胞数に大差はみられなかった。また、ドナー細胞としてブタiPS細胞を用いても、体外発生能や細胞数は、体細胞を用いた場合と比較して大差が見られなかったことから、幹細胞であっても卵子細胞質内で生じる初期化が強く促進されるわけではないと示唆された。培養培地にPHAを添加したところ、体外発生率が増加する傾向がみられた。
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