研究課題
血液病理学及び免疫学的解析から牛小型ピロプラズマ感染による貧血病態に関する以下の研究成果を得た。放牧ウシの各種血液検査項目等を牛小型ピロプラズマ感染群と非感染群、あるいは貧血発症群と非発症群との間で比較分析し、小型ピロプラズマ自然感染による貧血病態を血液病理学的に調べた。また、小型ピロプラズマ実験感染ウシの試験で得られたデータも同様に解析を行った。得られた各種血液検査項目の成果等から小型ピロプラズマ感染による放牧ウシの貧血病態は大球性高色素性貧血に分類されることが判明した。一方、原虫に特異的なウシの細胞性免疫及び液性免疫を評価できるELISpot法を用いて、小型ピロプラズマに対する免疫応答を非発症ウシのそれと比較検証した結果、小型ピロプラズマ病の貧血発症は宿主免疫の異常バランスに起因することが判明した。すなわち、小型ピロプラズマに感染した牛では、免疫の異常バランスを背景に、血管内での酸化ストレスが誘起され、(感染・非感染)赤血球膜の傷害が起こり、脾臓での傷害赤血球の貪食・排除が加速していくものと思われた。その結果、造血機能の過亢進が起こり、赤芽球の核成熟が追いつかず、未成熟巨大赤血球が大量に出現し、無効増殖(赤血球寿命短縮)による悪性貧血が起こるものと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
ウシ小型ピロプラズマ感染による貧血発症機序を解明するための2つのアプローチから順調に研究は実施され、血液病理学的及び免疫学的見地からウシ小型ピロプラズマ感染による貧血の分類と発症起因の一端が明らかとなった。このことにより本研究課題は概ね順調に進展していると考える。
もう一つのアプローチである「原虫病学(タイプ別やマダニ種別感染と宿主感受性)から見る貧血発症機序の解明」を実施する。すなわち、1)国内外の分子疫学調査から、どのタイプの小型ピロプラズマが、どのマダニ種によって媒介され、どのウシ種に感染しやすいのかを検証し、分類する。また、2)タイプ別の小型ピロプラズマ感染、媒介マダニ種別の小型ピロプラズマ感染、及びウシ種別の感染においてどのように貧血病態が異なるのかを、血液病理学的及び免疫学的に比較検証する。さらに、3)タイプ別やマダニ種別感染、ウシ種別感染から見る小型ピロプラズマ病における貧血発症機序を血液病理学的、免疫学的、及び原虫病学的に分類し、新規ワクチン開発やマダニ駆除プログラムの構築等に関する小型ピロプラズマ病制圧戦略の将来展望を学術的にまとめる。
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