研究実績の概要 |
MAPK経路は真核生物に広く保存されている増殖刺激やストレスなど細胞外シグナルを核へと伝達する経路である。この経路は、ERK1/2、JUK1-3、p38の3経路に大別され、それぞれ、上流のキナーゼ群が存在する。そこで、各経路について鍵となる遺伝子について、機能阻害とRNAプロファイル解析により各経路の役割を明らかにすることを計画した。 また、p38 MAPKは、ラパマイシン受容体(TOR)を介した制御を受けている。また、ラパマイシンは抗老化物質とし注目されているが、昆虫では詳細な解析は行われていない。そこで、カイコMAPK経路と、ラパマイシン情報伝達経路関連遺伝子との関連を明らかにすべく、各遺伝子の機能解析を行った。 まず、カイコゲノム中にMAPKKKKを6遺伝子、MAPKKKを11遺伝子, 4 records MAPKKを4遺伝子、 MAPKを3遺伝子同定した。ついで、各遺伝子の機能阻害解析を行った結果、これらの単独機能阻害は、細胞の形態、増殖に影響を及ぼさなかった。ERK、p38、JUNキナーゼなど、各経路について1種しか存在しない遺伝子についても同様であった。また、ERK、p38、JUNキナーゼ機能阻害BmN4SID-1細胞よりRNAを抽出し、次世代シーケンサー(RNA-Seq)を用いたRNAプロファイル解析用のライブラリー作製し、mRNA発現動態の変化を解析したところ、p38、ERK1/2、 JUK1-3機能阻害細胞においてそれぞれ、18, 14, 32遺伝子の発現が顕著に変化していた。特に、Na/K-transporting ATPase subunit beta-1-interacting protein 3 (NKAIN3)をコードしていたBGIBMGA017058 遺伝子は、p38、ERK1/2、JUK1-3の3種の阻害細胞全てにおいて発現量が低下していた。
|